不動産の財産分与について

財産分与の対象となる不動産とは

基本的に、婚姻後に購入した不動産であれば、財産分与の対象になります。片方の配偶者が婚姻前に購入した不動産であっても、婚姻後に不動産のローンを支払っている場合には、結婚後夫婦が協力して財産の維持ができたと解釈し、財産分与の対象になります。この場合、婚姻前に支払った不動産の頭金や、ローンについては、特有財産の問題として処理します。

不動産の評価方法について

不動産を売却することに合意した場合

不動産を売却する場合には、実際に売却できた金額を基準とし、不動産の残ローンと売却にかかる諸費用を差し引いた金額が、財産分与の対象となります。

不動産を売却せずに夫婦の一方が取得する場合

不動産を取得する側は、不動産を取得しない側に対し、不動産の時価の2分の1相当分の代償金を支払う必要があります。評価時点は、基本的に現在の時点(訴訟中であれば、口頭弁論終結時)が基準となります。
不動産を売却する場合には、不動産の時価は実際に売却できた金額を基準とするため明確ですが、不動産を売却しない場合には、不動産の時価額を巡って争いになることが少なくありません。
不動産の時価額の算出は、不動産業者の簡易査定を基準とすることが多いですが、不動産を取得する側は、できる限り不動産の価値を低く見積もった査定書を提示して代償金を低く抑えようとし、不動産を取得しない側は、不動産の価値を高く見積もった査定書を提示し、高額な代償金を請求することが考えられます。
代償金の金額についてなかなか折り合えない場合には、裁判所が選任する不動産鑑定士に不動産を鑑定してもらう等の方法をとることがあります。ただし、不動産鑑定士に依頼すると、費用が数十万円かかるため、実務では双方が提出した不動産業者の簡易査定の金額の間をとって話し合いで折り合いをつけることが多いです。
なお、不動産の取得を希望する側が代償金を支払う資力がない場合があります。収入の少ない妻が幼い子どもと一緒に自宅不動産に住み続けることを希望しているケースでは、話し合いにより、妻側に一定期間の無償居住を認め、子どもがある程度の年齢になって妻が働けるようになった後に不動産を売却するか、分割で代償金を支払ってもらう方法で解決することもあります。

不動産の分与の割合

不動産の時価額が残ローンを上回る場合

共有財産である不動産の分与割合は、基本的に2分の1です。不動産の持分が100%夫名義でであっても、婚姻後にローンの返済を行っている場合には、妻は売却益の2分の1の分与を求めることができます。

オーバーローンの場合

不動産の時価額が残ローンを下回るオーバーローンの場合には、基本的には不動産は財産分与の対象にならず、ローンの債務者が引き続き残ローンを負うことになります。

特有財産について

特有財産の例

以下のような事例の場合は、夫婦が二人で築いた共有財産ではなく、片方が負担した割合が大きいため、不動産の分与割合を2分の1とするのは不公平に感じると思います。
そこで、不動産に夫婦の一方の特有財産が含まれる場合に、どのように分与すべきか解説します。

ア 不動産の頭金を夫婦の一方の独身時代の貯金から支出した場合
イ 不動産の頭金を夫婦の一方の親族の援助で支出した場合
ウ 相続財産を不動産の頭金又はローンの繰り上げ返済に充てた場合
エ 婚姻前又は同居前に夫婦の一方が不動産を購入して婚姻前にローンの一部を支払った場合
オ 別居後に夫婦の一方が不動産のローンを支払った場合

特有財産の立証について

特有財産は、相手が特有財産であることを認めない限り、「特有財産」に当たることを立証する必要があります。
例えば、婚姻後にしばらく時間が経ってから不動産を購入し、片方が頭金を支出した場合、頭金の原資が独身時代の貯金か、それとも婚姻後に増えた財産からの支出か判別が容易でないことが多くあります。
また親族からの援助についても、援助の時期が古いと、援助してもらったことを裏付ける証拠が見つからないことがあります。
10年以内の通帳の履歴であれば、金融機関から取り寄せられる可能性があるので、通帳の履歴からお金の流れを追って特有財産を立証できることがあります。また親族からの援助については、銀行の振込履歴、贈与税の申告書類、不動産購入時の資料等から立証する必要があります。

特有財産の計算方法

特有財産の取得割合については、裁判所では決まった計算方法があるわけではなく、裁判官の裁量に委ねられています。
実務上は、特有財産の計算方法として、大きく分けて①夫婦の寄与割合から算出する方法と②特有財産を取り分けて残りの部分を精算する方法の、2通りの考え方のいずれかで解決することが多いため、以下事例をもとに解説します。
なお、それぞれの事情によって、上記以外の計算方法もとることもあるため、詳しくは弁護士にご相談ください。

不動産の頭金を支出した事例

不動産の購入価格を7000万円、不動産の頭金として妻の両親から500万円、夫の独身時代の貯金から100万円を支出し、6400万円の住宅ローンを組み、同居中に1400万円の住宅ローンを返済し、残ローンが5000万円、不動産の現在の時価額が6000万円のケースを想定します。

【夫婦の寄与割合から算出する方法】

妻の寄与額
頭金500万円+700万円(別居後のローン返済額の2分の1)=1200万円
夫の寄与額
頭金100万円+700万円(別居後のローン返済額の2分の1)=800万円
妻の寄与割合
1,200万円÷夫婦の寄与額の合計2,000万円=60%
夫の寄与割合
800万円÷夫婦の寄与額の合計2,000万円=40%
不動産の現在価値
時価額6,000万円-残ローン5,000万円=1,000万円
妻の取得額
1,000万円×0.6=600万円
夫の取得額
1,000万円×0.4=400万円

【特有財産を取り分ける方法】

妻の特有財産の出資割合
頭金500万円÷不動産の購入価格7,000万円=7.1%
夫の特有財産の出資割合
頭金100万円÷不動産の購入価格7,000万円=1.4%
不動産の時価に占める妻の特有割合
6,000万円×7.1%=426万円
不動産の時価に占める夫の特有割合
6,000万円×1.4%=84万円
特有割合を除いた残額
6000万円-(426万円+84万円)=5490万円
夫婦共有財産の範囲
5490万円-残ローン5000万円=490万円
妻の取得額
490万円÷2+426万円=671万円
夫の取得額
490万円÷2+84万円=329万円

柔軟な解決を目指して

不動産の財産分与の方法についての基本的な考え方を解説しましたが、実務においては、夫婦の財産状況、収入、離婚に至る原因、子どもの年齢、離婚後の経済状況等を考慮し、柔軟な解決を図ることがあります。
例えば、不動産のローンを離婚後も夫が支払い、収入のない妻と子どもに一定期間の無償居住を認める形で交渉がまとまることも多くあります。財産分与には、夫婦で築いた共有財産を平等に分ける清算的財産分与のほかに、離婚後の生活を支える扶養的財産分与の側面があるため、夫婦間に収入格差が大きい場合には、離婚後に収入が低い方が生活に困らないために、無償の居住権を一定期間認めるべき場合もあります。
また不貞行為を行った有責配偶者側から離婚したい場合や、婚姻費用の負担が重いことから義務者が早く離婚したい場合等に、離婚したい側が離婚に応じてもらうために、不動産を多めに分与し離婚することも珍しくありません。
財産分与の基本的な考え方を理解しつつ、粘り強く交渉することで、有利な不動産の分与を得られる可能性があります。
当事務所では、懇意にしている不動産業者に迅速に査定書を作成してもらい、依頼者のために有利に主張できることはないか、親身に考えサポートしていますので、不動産の分与についてお困りの際は、ぜひ弁護士のサポートを受けてください。

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