婚姻費用について

別居期間中の婚姻費用の請求

夫婦の婚姻期間中は、別居中であっても配偶者を扶養する義務がありますので、生活費を配偶者に請求することができます。この生活費(扶養料)のことを婚姻費用といいます。
婚姻費用は、まず夫婦がお互いの収入や、生活費、子供にかかる費用を踏まえて話し合って決めます。
話合いによって解決できない場合には、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を提起することができます。
調停では、調停委員や裁判官の助言を得て婚姻費用について話し合いが行われます。調停でも解決できない場合には、審判に移行し、裁判官が互いの収入や、支出、その他の事情等を考慮し、最終的に金額を決めます。

婚姻費用の算定基準

婚姻費用について話し合いによって解決できない場合には、客観的な算定基準をもとに婚姻費用の金額を決めます。
婚姻費用の計算は、夫婦の収入、子供の数、子供の年齢等を考慮し、複雑な計算式を使って算定しますが、家庭裁判所の実務では、簡易迅速な計算のために、「婚姻費用の簡易算定表」が使われます。

婚姻費用の簡易算定表

夫婦のみの表
子一人の表(子0~14歳)
子一人の表(子15歳以上)
子2人の表(第1子及び第2子0~14歳)
子2人の表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)
子2人の表(第1子及び第2子15歳以上)
子3人の表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)
子3人の表(第1子15歳以上、第2子及び第3子0~14歳)
子3人の表(第1子及び第2子15歳以上、第3子0~14歳)
子3人の表(第1子、第2子及び第3子15歳以上)
出典 家庭裁判所ホームページ

具体例

夫婦のみの家族構成の場合には、収入が高い側が「義務者」、収入が低い側が「権利者」になります。子供がいる場合には、子供と同居していない側が「義務者」になり、子供と同居している側が「権利者」になります。
例えば、子供が二人(10歳、16歳)いる事例では、「子2人の表 第1子15歳以上、第2子0~14歳」の算定表に基づいて婚姻費用を計算することになります。
夫の税込み収入が650万円、妻の税込み収入が300万円(どちらも給与収入)であり、妻が子2人と同居しているケースでは、縦軸の650万円と、横軸の300万円が交わる12万円~14万円が夫から妻に支払われるべき婚姻費用になります。

住宅ローンがある場合の婚姻費用

夫が自宅不動産の住宅ローンを支払い、妻が引き続き自宅不動産に住む場合には、夫側から婚姻費用の金額から住宅ローンの金額を差し引くべきという主張がなされることがあります。
しかし、住宅ローンの支払は、夫自身の資産形成のための債務弁済であると考えられるため、実務では住宅ローンの支払いをそのまま婚姻費用から差し引く考えは採用していません。
妻側は、自宅不動産に住み続けることにより住居費の支払いを免れることができるので、実務では住宅ローンの全額を控除するのではなく、例えば妻側の収入に応じた標準的な住居費を婚姻費用から控除する調整等がされています。

算定表に基づかない婚姻費用が認められる場合

簡易算定表は、公立中学校、公立高校の学校教育費を基準としており、私立の学校の学校教育費や塾代等が含まれていませんので、夫婦が私立学校の進学に同意している場合には、互いの収入や資産からみて算定表以上の婚姻費用が認められることもあります。
また子供に重い障害や病気があり、治療費が定期的にかかる場合には、算定表以上の婚姻費用が認められる場合もあります。
義務者の収入が2000万円を超える場合には、算定表の上限額を限度とするか、それとも算定表以上の婚姻費用を認めるかは裁判官の考えにもよりますが、事情により両方可能性があります。
一方義務者が借金を負っており、借金の原因が婚姻生活を維持するためにやむを得ずに借り入れた場合には、算定表よりも婚姻費用が減ることがあります。

婚姻費用の支払の確保

婚姻費用を確実に支払ってもらうためには、夫婦間の合意を公正証書にするのが望ましいです。公正証書にすることで、婚姻費用の支払いを怠った場合には、裁判を経ることなく給与の差し押さえ等の強制執行ができます
相手が公正証書の作成の応じない場合には、婚姻費用分担調停を提起し、調停調書を作成することで、強制執行が容易になります。

早めに婚姻費用の請求をすること

裁判所は、過去の婚姻費用が未払いであったとしても、請求の意思を明確にしない限り遡って支払うことを認めてくれないケースが多くみられます。婚姻費用の請求の意思を明確にするためには、内容証明郵便で明確に請求の意思を示すか、婚姻費用分担調停を提起する必要があります。
婚姻費用を請求すると相手を怒らせ、離婚請求をされると困るという理由により婚姻費用の請求をためらう方がいらっしゃいますが、婚姻費用の請求は正当な権利であり、これにより離婚が認められやすくなることは基本的にありません。
婚姻費用を請求せずに時間が経つと、過去の未払い分が支払ってもらえない可能性があるので、婚姻費用を請求したい場合には、早めに弁護士にご相談ください。

ページの先頭へ

相談受付時間:平日9:30~19:00

03-0000-0000

空きがあれば土日も相談可

ご来所:初回相談30分無料

オンライン相談:30分5,500円(税込)

ネット予約24時間受付

電話が繋がらない場合や、時間外の場合はメールフォームで連絡ください。ご連絡いただければ原則24時間以内にご返信いたします。

menu