親権・監護者の指定について
目次
親権者の指定について
離婚する時に未成年の子どもがいる場合には、夫婦のどちらか一方を親権者と決めないといけません。令和4年4月からの成年年齢の引き下げに伴い、離婚時に満18歳以上の子どもであれば親権者を決める必要はなくなりました。
親権者は、子どもの住む場所を決定し、財産を管理し、身分上の行為の代理を行う等の権限を有します。一般的には、親権者が離婚後も子どもと一緒に住み養育し、これらの権限を行使する場合が多いといえます。
親権者の指定については、協議で定めますが、夫婦が話し合っても合意できない場合には、家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てることになります。
調停が不成立になった場合には、審判又は離婚訴訟で親権者を決めることになります。
親権者決定の判断基準
父母のいずれが親権者としてふさわしいかは、これまでの監護状況、経済的・精神的家庭環境、子の年齢、性別、子の意思等を総合的に考慮して決めることになります。
(1) 同居中の親優先
子どもの環境をむやみに変えることは、子どもに心理的不安をもたらすという考え方から、夫婦が別居している場合には、子どもが現在一緒に暮らしている親が子どもを虐待・育児放棄していない限り優先すべきとされています。
(2) 母親優先
乳幼児の場合には、生育に母親の愛情が不可欠という考えから、子どもが幼ければ幼いほど母親が優先される傾向にあります。
(3) 子どもの意思
15歳以上の子どもは、親権者の指定に関する裁判をする場合には、子の陳述を聴かなければならないとされているため(人訴32条4項)、子どもの意思も判断基準になります。
15歳以下であっても、家庭裁判所の調査官により、親権に関する子どもの意思の確認がされることがあります。何歳以上であれば子どもの意思が重視されるか、明確な基準はありませんが、裁判所の実務上は、10歳前後以上であれば、子どもの意思を様々な方法で確認しているようです。
(4) 面会交流への柔軟な対応
子供の成長過程において、同居していない親とかかわりを持つことは、子どもの心身の発達のために望ましいと考えられているため、親権を持った場合に、相手方と子どもの面会交流を認めることができるかも親権者としての適格性を判断する基準になります。
監護者の指定について
子どもと一緒に暮らして身の回りの世話をする者を監護者といいます。一般的に親権者と監護者は一致し、親権者が子どもと一緒に暮らすことが多いですが、例外として、子どもと住む監護者が親権者とは別に定められる場合があります。
監護者指定の手続は、離婚時に限らず、離婚前や離婚後に行うこともできます。例えば、離婚する前に別居する際に、子どもとどちらの親が一緒に暮らすか話し合いで合意できない場合には、裁判所に監護者指定の調停又は審判を起こすことができます。
監護者指定の調停は、調停において折合いがつかない場合は、審判手続に自動移行します。審判では、これまでの子どもの養育環境、今後の養育環境の見通し、経済的・精神的家庭環境、子どもの意思等の様々な事情を考慮し、裁判官が監護者指定に関する判断をすることになります。
離婚の際の親権者の指定の判断要素において、離婚時に子どもをどちらが養育しているか重視されるため、親権について有利に進めるためにも、安易に子どもを相手に渡してはいけません。夫婦生活がどんなに辛く一刻も早く別居したかったとしても、子どもを相手のもとに置いて別居し、後で親権を争っても認められないことがあります。
どのような事情があっても、親権を希望する場合には、お子さんの監護に関して慎重に判断することをお勧めします。別居に際し子どもとどちらが一緒に住むか話し合いで合意できない場合には、弁護士にご相談ください。
子どもの連れ去りについて
夫又は妻が幼い子どもを連れて別居に踏み切ったケース、面会交流中に子どもを連れ去ったケース等、十分な話し合いもなく相手が子どもを連れ去った場合には、早急に調停又は審判で子の引き渡しを求める必要があります。実務上は、子の監護者の指定の申立ても併せて行うことが多いです。
家庭裁判所は、子の引き渡しの審判をする場合には、これまでどちらの親が主に子どもを養育していたか、今後の養育環境、連れ去りの方法、子どもの意思等を考慮して判断します。児童虐待等、子どもに差し迫った危険がある等の場合には、審判前に子の引き渡しの保全処分が認められることがあります。
大切な子どもが急に連れ去られた場合には、不安でパニックになりやすいと思いますが、自己判断をせずに早めに弁護士にご相談ください。